猫いらず

昔から、猫はネズミの天敵でした。
トムとジェリーのように漫画の世界でも、猫がネズミを追いかけるシーンが見られます。
このように、世界中の猫たちがネズミを追いかけたのでしょうね。

昔はネズミを取らせるために、猫を飼いました。
今はネズミの発生に困ったからと言って、そのために猫を飼うヒトは少ないでしょう。
そのかわり、“ネズミほいほい”なんて言う粘着性の生け捕り器や、“猫いらず”なんて言う薬を買い求めるのです。
“猫いらず”とは、猫がいらない・・・つまり“殺鼠剤”のことなのです。

世の中、猫の好きなヒトたちばかりとは言えません。
猫が大嫌いなヒトもいるでしょう。
そんなヒトのためには“猫いらず”は画期的な薬だったでしょうね。

【昔の猫いらずは石見銀山】

猫いらずは、江戸時代には「石見銀山ねづみとり薬」と言う名で売られてました。
石見銀山はネズミをよく取ったため、殺鼠剤の代名詞のようにして知られてたそうです。

現在この石見銀山は銀山跡となってしまいましたが、世界遺産候補として暫定リストに追加されたこともある遺跡なのです。
その銀山では、殺鼠剤の原料であった砒石が採れたのです。
と言うか、砒石は銀を採掘した時に出る副産物だったのです。
そして砒石から砒素が取り出され、それを餌に混ぜて使用していたのです。
砒素・・・和歌山であったカレー事件にも混ぜられていた、あの砒素です。

【ワルファリン中毒】

現在、殺鼠剤には石見銀山などは用いられてません。
殺鼠剤として、いくつかの薬剤が使用されています。
その中で中毒として問題となるのが、ワルファリンと呼ばれている薬剤です。

ワルファリンは、ビタミンKの働きを抑えてしまう薬です。
ビタミンKは血液凝固に関係する物質を産生させる働きを持っています。
そのためビタミンKの働きが抑えられると、血液を固めることが出来なくなってしまうのです。
このように、ワルファリンは血液が固まらないようにする作用を持つ薬です。

ワルファリンは強力な出血を起こす作用を持つことから、殺鼠剤に使用されたのです。
体の中に入ったら血が固まらなくなり、あちらこちらから出血を起こし死に至るのです。

ワルファリンは即効性の殺鼠剤ではありませんでした。
ワルファリンを食べたネズミは、すぐには死なず数日かけて死んでいくのです。
そのため他のネズミも警戒せずにワルファリン入りの餌をよく食べるのです。

ワルファリンを食べると体のあちらこちらが出血を起こしますから、体力が落ちてきます。
そこを罠で捕まえるのです。

即効性の殺鼠剤は、ネズミがどこで死ぬか分からず死体の回収が徹底できません。
そうすると死骸から、異臭や病原菌を放つことになるのです。
その点ワルファリンは死体の回収が可能であったため、よく使用されたのです。

【症状】

元気が無くなり食欲が落ちます。
お腹に、出血斑がみられます。
血尿、 血便となり粘膜が貧血のため蒼白くなります。
呼吸困難を起こし死亡する場合もあります。

【ワルファリンは良い薬でもある】

実はこのワルファリンは、血栓症や栓塞症の予防や治療として服用している方がいます。
血栓症や栓塞症と言うと、静脈血栓、心筋梗塞、脳血栓、肺栓塞、冠状動脈閉塞などがよく知られてます。
これらの病気はとても恐く、命と直接関係があるような病気が多いですね。

ワルファリンは、血液が固まらないようにする作用を持つ薬です。
この効果を、実際の病気の予防や治療に応用しているのです。
ワルファリンは抗凝血薬として、抗血栓療法の基本的な薬として使用されています。

殺鼠剤と言われている薬が、実はヒトの世界では病気の予防や治療に役立っているのです。